クローズドモデル化された建築〜建築と不動産の狭間 その1〜

「その1」では、

①サブリース(建て借し)という仕組みが悪なのか?

②サブリース業者と建築業者が一体でいいのか?

③そもそも、建築は相税対策になるのか?

を考えてみようと思います。

サブリースという仕組み

サブリースとは、賃貸住宅で言うところの「一括借り上げ」という仕組みで、

最近できたものではなく、不動産業者主導で結構古くから行われているビジネスモデルです。

 

「一括借り上げ」という名前からもわかるように、

不動産業者などがアパートやビルなどを大家さんから全体を借り上げ、

それを各部屋や面積ごとに再度貸し出すものです。

 

一般的な賃貸借契約では転貸(てんたい・二度貸しとも言います)を禁止している例が多いのですが、

それは大家さんからみたときの「借り手」と、実際に使っている「使用者」が変わることで、

管理面で不都合が起きたり、権利関係が混乱することを防ぐためです。

 

その「転貸」を前提としたサブリースは、ほとんどがテナント管理もサブリース業者が行い、

家賃も入居の有無にかかわらず、一定で大家さんに支払われます。

そのため、大家業(テナントや入居者管理)に慣れていない方にすると、

募集から管理、退去までの管理を行ってもらえるばかりか、

家賃収入も安定して見込めるところが大きなメリットとなります。

 

もちろんビジネスですから、サブリース業者もメリットがないと事業として成り立ちません。

そのメリットは、一括借り上げすることを条件に、大家さんへの支払い家賃を市場レベルよりも低く抑え、

テナント(入居者)からは市場並みの家賃を回収し、その差益を得る、というものです。

 

この仕組みは賃貸住宅というよりも、オフィスビルや店舗など、

大家もプロ大家、テナントもプロ事業者と言う間で行われることが多く、

その間での契約であれば、それぞれのビジネスのメリットの中で、

リスクなども吸収することができます。

 

例えば、都心のビル1棟を、オーナー自ら管理をすることは非常に手間がかかるため、

通常はビル管理業者(不動産管理業者)に委託して管理することが多いのですが、

それを1歩進めて全体を貸し出すことで安定的な収入となり、資金面での担保を持つことができます。

そうすれば、長期的な経営が見通すことができ、他の事業に使うための借り入れがスムーズにいったり、

経営を安定化させるひひとつのやり方ともなります。

問題はサブリース契約そのものではない。

しかし、今回の問題は「サブリース」契約の手法にあるのではなく、

「サブリース業者」と「建設業者」が同一だと言うことです。

便宜的に、「サブリース建設業者」と呼びます。

 

アパート経営を始めるにあたり、新築でアパートを建てるとしましょう。

その建築費用を家賃収入で返済しながら、利益を生ませるのが通常のビジネスです。

 

サブリース建設業者のサービスを見ると、それらをうまく「パック化」しています。

イニシャルコスト(≒建設費用)と返済費用を上手く釣り合うような「パック」にして、

表面的には自己資金なくアパートが手に入るように提案しています。

その提案の中には、銀行融資までセットされているものもあります。

 

しかし、建設コスト(≒イニシャルコスト)が建てるものに見合った適正なものなのか、

金利や借り入れ期間、月々の返済額などの返済コスト(≒ランニングコスト)が釣り合うものなのか、

客観的に妥当性の検証ができにくくなります。

 

事業として不動産事業を行うのであれば、建設コスト(イニシャルコスト)と、

借り入れコスト(ランニングコスト)をできるだけ下げて、

「家賃収入ーコスト=利益」をしっかり確保することを考えねばなりませんが、

どちらも同一の業者に握られている以上、どちらもオーナー側ではどうしようもありません。

 

さらには、「借り入れ期間」と「一括借り上げ期間」を同一にすれば、

サブリース建設業者からの家賃収入で返済が滞らない、という風にも「見え」ます。

 

しかし、数年前から報道されている事例もあるように、

サブリース契約更新の際に、家賃を一方的に下げられるような契約になっていたり、

満室にならないからと、オーナー側に契約解除をちらつかせる場合もあるようです。

これでは、安定した不動産事業とはなるはずもありません。

きっかけは、相続税対策

そこに、アパートを建てるきっかけになる「相続対策」があると、

さらに話はややこしくなります。

 

相続税を圧縮するために、てっとり早いのは「負債」を作ることです。

いくら現金がなくても土地や株などの資産を持っていた場合、

相続の際にそれらが資産化され、課税の対策になります。

それを避けるために、アパート建築に伴って借金をすることで、

負債を起こすことで、課税対象の資産を減らすことができます。

これが、「アパート経営が相続税対策になる」と言われる側面でもあります。

 

しかし資産である自己所有の土地の上に、新た負債によるアパートを建てて、

収入がしっかりしていれば安泰ですが、それを握るのは「サブリース建設業者」です。

日本は人口減少局面

日本は随分前から人口減少局面に入り、

それと連動して空き家率も2013年統計で13%に上っています。

今からたった10年先の2033年には、なんと30%を超えるとも言われています。

その市場の中で、サブリース建設業者に全部を託した賃貸住宅が、

果たして勝ち残れるでしょうか?

 

ここまでが、現在のアパートサブリースの問題の一つです。

愛だろ!愛!!

私が最も問題だと思うことは、この脈絡の中に一つも「愛」が見えないことです。

 

大家と入居者の間にサブリース業者が入っている以上、

大家には入居者の顔も見えなければ、その動きも見えません。

そこに「愛」はあるのでしょうか?

 

アパートを建てようと思ったきっかけが「相続税対策」だとすると、

そのアパートに「愛」を感じられるのでしょうか?

 

転貸することで利益を生むビジネスのスキームに、

サブリース業者は「愛」を生み出せるのでしょうか?

 

市場や大家さんの希望に構わず、

パック化されたサブリースアパートを建設し続けることに、

建設業者は「愛」を見いだせるのでしょうか?

 

どこにも愛することがない、愛されない、そんなビジネスを、

うまく回らなくなったところで、だれがキャッチアップしようと思うでしょうか?

 

2010年に、当時リクルート住宅総研の主任研究員だった島原万丈さんが執筆された、

「愛ある賃貸住宅を求めて」にも、

我が国の賃貸住宅のの環境自体に「愛」が足りないと記されています。

 

この問題で一番大きいことは、「愛がない」ことに他ならないと、

私は考えています。