敷地調査の重要性


土地は買う前に、建築士や工務店に相談しましょう。

日々お施主さんと接していて感じる「敷地の事前調査の重要性」。私たちにご相談をいただいた場合、まずは、法規制や敷地形状、周辺状況を綿密に調査します。
しかし残念ながら、これから土地を買われる方からの調査依頼はほぼ皆無です。そのような調査が必要かどうなのか、あまり知られていないからでしょう。
私たち建築士仲間の中でよくでる話題の一つで、
「もっと早く相談してくれていれば、もっと他の選択肢もお教えできたのに・・・」
という、残念な結果になる事柄の一つです。

 敷地には、建築基準法や都市計画法、宅地造成規制法、その他市町村条例など、大きなものから小さなものまで、あらゆる規制がかかっています。その規制を事前に知らず土地を購入し、私たちに設計依頼が来た時点でその事が分かり、建物の希望を泣く泣く諦めたり、予想以上に建築費がかさんだりする事がよくあります。

たとえば・・・

東京中心部の閑静な住宅街に50坪強の土地を購入された後、設計依頼がをいただきました。早速現地を確認し、地元の役所を回って詳細調査をすると、驚愕の事実が発覚しました。その敷地は角地で、設計的には有利なプランができるかと踏んでいたのですが、南側の道路は都市計画道路の計画があり、敷地内まで道路境界線が入り込んでくるのです。さらに西側の道路は区道拡張の計画があり、その境界線も敷地内に入り込んでいました。

土地が空いていても、建てられない時があります。

都市計画道路内には、基本的には建築物は建てられないのですが、緩和措置として、簡単に撤去できる木造、鉄骨造の建物ならば2階建てまでは認められます。もちろん地下は不可。さらに区道が拡張されるところは基本的には建築不可。
庭として使うか、駐車スペースにするかしかできません。つまり、まともに建物が建つのは道路部分以外の30坪弱でした。

 売買敷地面積:50坪÷有効敷地面積:30坪=1.66倍

1.66倍も高い地価で土地を買ってしまったと言う事になります。
お施主さんの意向は家族4人がゆったり暮らして、地下に2台の駐車スペースと、スタジオが欲しいとの事でした。30坪の敷地に上記の要望を満たす事は困難で、別敷地を考えた方が良いとアドバイスさせて頂きましたが、不動産屋に当たっても売却困難で、手数料分どころか買った価格も大きく割り込みそうとの事で、結局売却を諦め、この敷地にどうやって建てるかを考えましょう、と言う事になりました。

このぐらいの事案になると、不動産取引で言う「重要事項の説明」に当たるので、もちろん不動産屋さんは説明していたに違いありません。お施主さんにお聞きしたら、確かにそのような事は説明されたとの事でした。

 

結果的には・・・

しかし、素人なのでよくわからなかったということと、計画道路内には、コンクリート造以外なら建てられると言われたので購入したとのことでした。重要事項の説明としては結構ギリギリのラインですが、もう既にあとの祭りでした。

しかもその計画道路、いつ事業決定(工事開始)になるか分らないと言う代物。計画ができて既に20年近く経っており、役所の担当者でも、「計画決定だけで終わり、見直しで無くなる可能性もある」といった、受け入れがたい道路だったのです。
結局、この敷地で計画する事になりましたが、敷地の高低差の関係から、都市計画道路側からしか車の乗り入れが難しく、

しかしこの道路には「地下」は作れない。しかも、その上に2層分作らないと、まともなプランができない。

結局、地元建築指導課と協議の上、構造を特殊なものにすることで、スロープ上に2層あてる事ができるようになりましたが、

非常に複雑な構造形式となり、建築費も想定の2倍を超えてしまいました。
それでもと言う事で、この住宅は着工し、無事竣工しましたが、行政との事前協議だけで6ヶ月、確認申請で3ヶ月強、工期8ヶ月と、通常の倍以上の時間がかかり、構造優先のため細かなところは諦め、その上で建築費が2倍かかると言う、何とも言えない結果となりました。
せめて土地を決済する前に、事前調査の依頼を頂いていれば、最悪手付けを放棄しても別の敷地を探す事もできました。

法規制だけでなく、地形や地盤も重要です。

この事例は私が関わった中でも最悪の事案でしたが、細かな部分ではどの敷地にも、法規制でできないことがあるか、できても非常にお金がかかる条件がある場合が多いのです。
隣地が崖であったりすると、その崖が崩れた場合を想定した擁壁の築造や、建物本体で受け止められるだけの構造補強を求められたり、地盤が弱かったために、大規模な地盤改良工事を余儀なくされたり。
以前にも私の友人が同じような事例で相談をくれて、
嫌な予感がしたので土地決済前に現地調査をしたら同じような事が発覚したので、キャンセルする事になりました。
その土地も、周辺価格より安い価格で売りにでており、それで飛びついたのですが、安いには安いなりの理由がありました。
ここまでお話しすると理解して頂けると思いますが、敷地の条件によって建てられる建物が制限される事もよくあり、そのために、事前の調査は欠かせないものです。

 特にこれから購入される方は、ぜひ設計事務所に事前相談をして下さい。

 

では、建物側で重要なことを、続いてお話しますね。

住まいづくりLaboへ。