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外張り断熱をすると、耐震性が上がる⁉️

「外張り断熱をすると、耐震性が上がる⁉️」
ん?何言ってんの?断熱と耐震性って全く関係ないですよ!

 

本来は全く関係ないんです。それが常識なんです。

それが関係あるかもしれない、公開実験してみよう!!

 

今回アイディールブレーン+モック+住学が合同で行った、耐力壁の加振実験に参加してきました。
アイディールブレーンさんは、木造建築の制振部材を開発、製造している会社。

モックはうちもよくお世話になっている、紀州材を供給している会社。

住学は、新潟県の工務店、設計事務所が中心となって、住宅についての勉強を共に行う団体。


この属性の違う会社、団体が合同して行う、外張り断熱が耐震性を上げるかも?

という実験を行うとのことで、いそいそと参加させていただきました。

これは本格的な実験だ!

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アイディールブレーンさんの実験棟で行われた加振実験

会場に到着すると、評価機関や建材試験センターでしかお目にかかれない試験装置が鎮座。

これは本格的な実験がライブで見られると、

 

オタクなワクワクが止まりませんでした(笑)

今回の実験では、下記の3つの仕様で加振をしてみて、その耐力や破壊形状を観察するというもの。

  1. 通常のモイスを使った面材耐力壁

  2. 1.の上に、90ミリのフェノールフォーム断熱材を外張りした耐力壁

  3. 2.の面材に制振テープを貼ったもの

まずは1.の通常の耐力壁の加振実験の様子

動画のように、試験体に力を加えて設定した変形量まで変形させるのに、
どのぐらいの力が必要かを測ります。変形させるのに必要な力が、
大きければ大きいほど耐震性が高いと判断できます。

上の動画は、力をかけて最後まで変形させ切った状態です。
この状態までいくと、この耐力壁はほとんど抵抗することが出来ない状態=終局状態になります。

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終局状態の釘周りの状態

終局状態になると、面材を止めている釘の周りがグスグスになったり、
釘が抜けたりして、留めつける効果がなくなる=耐力壁として抵抗しなくなる状態になります。
この状態になるまでに加えられる力が「耐力壁の強さ」と評価されて、
正式な壁倍率となります。
つまり、釘と面材の接触面の状態=耐力壁の強さということになります。

ではこれが、外張り断熱をしている場合どうなるかというと・・・

動画で見る限りは、普通の耐力壁とそう変わらない動きをしていますが、
裏側を見ると・・・

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裏側から見ると、耐力面材が割れていました

なんと!!耐力面材が割れていました!!
こんな風になるのは初めて見ました。
普通の耐力壁だと、割れる前に釘の周りがグスグスになって終了のところ、
それを超えて、面材自身が割れるところまで耐えてくれました。

そして外張り断熱材を外してみると・・・

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釘が折れていました

なんと!!断熱材で押さえられているところは、
ことごとく釘が折れていました。

割れるところまで耐力面材が耐え、さらに釘が折れるところまで耐えてくれたということです。
普通はここまで行かないので、強度的には大きくなっていたと言えますね。

これに制振テープを貼った試験体は、釘が折れたり抜けたりする前に面材が大きく割れて終了。
制振テープがさらに抑え付けと粘りを増して、より多くの力を面材側に伝えることができ、それによって通常より大きな力を受け止めたということです。
制振テープ自体にそれほど大きな働きがあるとは思っても見ませんでした。

試験体の観察から考えたメカニズム

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通常の耐力壁の断面

上記の図は、通常の耐力壁の断面を記しています。
耐力面材は柱や間柱、土台、梁などに釘で固定されています

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終局状態の耐力壁断面

これが揺らされて終局状態になると、耐力面材の釘の周りがグスグスになって釘との固定がされなくなり、繰り返し揺らされたために、耐力面材が浮き上がってしまいます。
この状態になると構造的に効いていない状態になります。

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外張り断熱材がある状態の断面図

外張り断熱材は、耐力面材を柱と挟み込みようにビスで固定します。

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外張り断熱材がある耐力壁の終局状態

通常の耐力壁は釘の周りがグスグスになったり、耐力面材が浮き上がって終局状態になりましたが、釘と耐力面材が断熱材で押さえ込まれているので、
浮き上がることができず、モロに水平の力(剪断力)を釘が受け止めることとなります。

最終的には釘が耐力面材と柱の間で折れてしまい、終局状態に至ります。

ちなみに、この釘を押さえる効果を「コンファインド効果」(拘束効果)と呼び、CFT(コンクリート充填鋼管)で用いられるコンクリート強度を高める手法に似ています。

耐力面材の硬さと釘の硬さを比較すると、圧倒的に釘の方が硬く、
耐力面材がぐずぐずになる力<釘を折る力
と言えるので、釘が外張り断熱材で押さえ込まれる(拘束される)ことにより、より潜在的な耐力壁の力を発揮できた、といえます。

ただ今回の実験の目視で見えるのは、
耐力壁の終局状態=倒壊寸前
の状態で発揮されるメカニズムなので、地震の初期状態でも耐力が強くなっているのか?というのは、試験中に採取しているデータからしかわかりません。

ただ、外張断熱材が構造に寄与しているということが判ったことは画期的で、
「倒壊するまでの時間を稼ぐことができる→避難するまでの時間を稼げる」ということは言えます。
アイディールブレーンさんから、追ってデータの報告があるということですので、楽しみに待ちましょう。